
プログラミングを描くアニメシリーズへの挑戦
6か月かけたパイロット版の完成後、放送、映画祭、企画提案を通じてシリーズ化の条件を探った記録。
2020年10月、ソフトウェアエンジニアを題材にした短編アニメを、どうすればシリーズへ育てられるのかを考えていました。
東京でアニメーション制作とソフトウェア開発の両方に携わる中で始めた作品が『Venture』です。舞台は東京の国際的なテックスタートアップ。エンジニアとして働きながら5年間書きためた出来事やアイデアを基にしています。職場コメディ、制作現場、技術概念の擬人化を組み合わせる際には、『シリコンバレー』『はたらく細胞』『SHIROBAKO』『かくしごと』を参照しました。プログラミングそのものを題材にしたアニメを見たいと思い、自分で作り始めました。

01 / パイロット版
仕事と並行した6か月
脚本、演出、作画、ポストプロダクション、公式サイトまでを一つの個人制作として進めました。パイロット版の完成には、本業以外の時間を使って6か月かかりました。本業ではフロントエンド開発からフルスタック開発と顧客対応へ担当が広がり、夜と週末には脚本、演出、作画、編集、その周辺業務を進めていました。二つの仕事を止めないためには、時間を細かく区切り、何を諦めるかを決める必要がありました。
制作開始から約1年後、パイロット版はチバテレで放送され、海外映画祭で受賞・正式選出されました。YouTubeで作品を知った人の反応を受けて制作した別の短編第1話も、同じチャンネルで放送されています。テレビとラジオの取材も初めて経験し、PR用テレビCMの企画も動き始めました。

02 / ピッチ
完成映像は出発点だった
キャラクター設定、シーズン1の構成、日英の企画書をそろえて次の段階へ進みました。5年間書きためた物語を2本の短編だけで終わらせたくありませんでした。新型コロナウイルスの影響でスタジオ収録のリスクが高まった時期には、新作の制作を一度止め、その時間を使ってプロデューサーへのピッチを続けました。
日英のピッチバイブルには、キャラクター設定とシーズン1のストーリーを収録しました。脚本からポストプロダクション、宣伝、PRサイトの実装と公開まで、一人が広い範囲を担当している点には関心を持ってもらえました。しかし、その驚きが企画成立につながるわけではありませんでした。

この記録を書いた時点で、すべてのピッチは不成立でした。経験豊富なスタジオの質の高いパイロット映像と並ぶ場で、ソフトウェアエンジニアというニッチな題材を提案していました。脚本、アニメーションの経験、物語の説明方法について、自分の不足も何度も見直しました。一方で、プロデューサーから繰り返し問われたのは、現在の視聴者数、見込める市場、販売方法といった事業面でした。
「プログラミングのアニメを待っていた」と届いたエンジニアからの反応は、題材が誰かに届いたという確かな手応えでした。ただし、それだけでは大きな制作を動かすための観客データにはなりません。その違いを知ったことで、次に必要な仕事が少し具体的になりました。
03 / 継続
もう一度、絵に戻る
発表形式は変えられます。それでも物語を作り続ける理由は残っていました。
2020年当時、進む道はまだ決まっていませんでした。ピッチを重ねる中でストーリーは変化しましたが、シリーズ化への方法は見つかっていません。ウェブシリーズにするのか、まず小さな漫画から始めるのか。ほかの作品から学び、手を動かし続けることが、その時点でできる具体的な一歩でした。
Gregory Chenさんにはパイロット版の一部アニメーションと石田真由の設定画、坂見良平さんには国内PRで協力していただきました。二人の仕事と、小さくても作品を待ってくれる観客の反応が、次の制作へ進む理由になりました。当時は次の取り組みがすでに動いており、詳細を伝える短い映像をYouTubeで公開すると予告していました。
本記事は最初にMediumで公開しました。2020年当時のプロジェクトリンクを資料として残します。